今回は、内部通報(内部告発)についてです。
多くのCSR監査では、企業内での内部通報の仕組みを要求されます。特に、グローバルレベルで使われるCSR関連基準には必ず含まていると言っても過言ではありません。
日本国内でもパワハラやセクハラなどのニュースを最近はよく耳にしますが、そのような告発をした方々は法的にはどのように保護されるのでしょうか?
告発や通報することを英語では、”whistleblow”、告発や通報する人を”whistleblower”と言います。イメージしやすいですよね。「笛を吹く」、「笛を吹く人」ということです。吹かれる笛には色々なものがあることになります。ときにはその笛を吹いた人が危険な目にあっているとき、ときには笛を吹いた人が会社の環境汚染を目撃したときなど。様々です。ただ、共通していることは、笛を吹く人は皆、「もう限界!」という状況です。
会社や社会は、この限界の状況で吹かれた笛に対し、しっかりと耳を傾けなければなりません。
私がこの言葉を初めて聞いたのは、米国公認会計士試験の勉強の中ででした。
2001 年から 2002 年にかけて、米国ではエネルギー大手のエンロンや通信大手のワールドコムが相次いで経営破綻しました。当時の世界5大会計事務所(Big5)の1つであったアーサー・アンダーセン会計事務所がこれらの会社の粉飾会計に関与しており、投資家などの多くのステークホルダーを欺いていたことが発覚しました。これにより、アーサー・アンダーセンもエンロン同様に解散に追い込まれました。アーサー・アンダーセンはBig5の中でも優秀な会計士を雇用していたと聞いたことがあります。この粉飾の事実が公になったのは、当時の従業員の勇気ある内部告発からでした。そして、この問題はこれだけの話ではなく、全米の多くの企業に影響を与え、後に、法案を提出した議員の名前からサーベンス・オクスリー法(SOX法)と呼ばれる上場企業会計改革および投資家保護法(Public Company Accounting Reform and Investor Protection Act of 2002)が制定され、その中では内部通報者保護に関する規定が設けられました。米国では、その後もいくつかの内部通報者保護に関する法律が制定され、保護が強化されていきます。