10日のニュースで各社が東芝さんの件に触れていました。
日本経済新聞:東芝「限定適正」意見の有報提出 債務超過5529億円
ブルームバーグ:東芝、製造業最大9657億円の赤字、監査意見は「限定適正」
そこで、今回は、会計監査における監査意見を取り上げたいと思います。
「限定適正」とか言われても分かりませんよね?少し前には、東芝さんの会計監査を担当しているPWCが、「意見不表明」を出すかもしれないというニュースが流れたこともありました。「意見不表明」って。。。と思われる方もいらっしゃると思います。
会計の監査では、会計士は意見(Opinion)を出します。
多くの認証審査では、審査員は、重大な不適合(Major NC), 軽微な不適合(Minor NC)、観察事項(Observation)などを出しますが、少し違いますね。
会計士が出す意見は、以下の4つに分かれます。
- 無限定適正意見
「まったく問題ありません!」ということです。
一般に公正妥当と認められる企業会計の基準にしたがって、会社の財務状況を「すべての重要な点において適正に表示している」旨を監査報告書に記載します。 - 限定付適正意見(東芝さんのはこれです)
「小さなところでは不適切な部分があるけど、ま~良いでしょう!」ということです。
一部に不適切な事項はあるが、それが財務諸表等全体に対してそれほど重要性がないと考えられる場合には、その不適切な事項を記載して、会社の財務状況は「その事項を除き、すべての重要な点において適正に表示している」と監査報告書に記載します。 - 不適正意見
「ダメですっ!」ということです。これが出るとその会社は。。。
不適切な事項が発見され、それが財務諸表等全体に重要な影響を与える場合には、不適正である理由を記載して、会社の財務状況を「適正に表示していない」と監査報告書に記載します。 - 意見不表明
「責任持てないから意見なんて出せませんよ~!」ということです。
重要な監査手続が実施できず、結果として十分な監査証拠が入手できない場合で、その影響が財務諸表等に対する意見表明ができないほどに重要と判断した場合には、会社の財務状況を「適正に表示しているかどうかについての意見を表明しない」旨及びその理由を監査報告書に記載します。
上記の3または4の意見が出されたときには、上場廃止になる可能性が高まります。
上場廃止基準 http://www.jpx.co.jp/equities/listing/delisting/
項目:虚偽記載又は不適正意見等
b. 監査報告書又は四半期レビュー報告書に「不適正意見」又は「意見の表明をしない」旨等が記載された場合であって、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めるとき
さて、上記1~4の監査意見ですが、米国の会計監査でも同じです。
- Unqualified opinion
- Qualified opinion
- Adverse opinion
- Disclaimer
あれ?と思われた方いらっしゃいますよね?
多くの方は、Qualifiedの意味を考えて、2.が全く問題のない適正意見だろうと思いますよね?私も、最初に米国会計監査の勉強をした時はそう思いました。
しかし、1.のUnqualified opinionが最も問題のない意見(無限定適正意見)なのです。
面白いですね。